世界に先駆けてMV-電気化学融合研究を猛暑対策に活用

徳納 吉秀

TOKUNOU Yoshihide

筑波大学 生命環境系

探求者インタビュー|徳納 吉秀イメージ画像

膜小胞を使った発電に世界で初めて成功

私たちのチームが本プログラムに採択された研究内容は、新しい生体材料を利用した生体センサーの開発です。
現在、生体材料を使ったセンサーやそれを活用したウェアラブルセンサーが私たちの日常生活に浸透していますが、本研究の独自性は微生物が産生する膜小胞(MV)を使う点にあります。

MVは微生物の細胞膜と同じ成分からなるナノサイズの小胞であり、様々な生体分子を内包していることから、近年ではMVを医療やバイオテクノロジーなどの様々な技術に応用するための研究が世界的に進められています。しかし、MVの性質にはいまだ未解明な部分が多いことから、MVを使った技術開発には多くの課題があります。

私たちは、2023年にMVが電気を出すことを世界で初めて発見しました。このMVの電気的な性質を活用すれば、MVを利用した電池の開発や、生体センサーの開発も可能になるかもしれません。その一例としてすでに私たちはMVを使ってギ酸という化合物を電気検出できることを実証しています。

MVを使って電池や生体センサーをつくることができれば、これまでの生体材料では実現が難しかった技術を開発し、社会に貢献できるかもしれません。そこで本採択課題の第一歩として、現代社会の喫緊の課題の一つである熱中症対策に目を向けました。
2023年の酷暑が示すように年々、熱中症による救急運搬数は幅広い年代で増加傾向にあります。それを食い止めるためにも、腕などに貼り付け、熱中症の危険度合いを予測する熱中症センサーの実現に取り組んでいます。

探求者インタビュー|徳納 吉秀イメージ画像

乳酸発電で外部電源不要、プロトタイプ作りも順調

MVの内包する酵素がギ酸などの化合物を酸化(分解)するときに電気が発生し、その電気を検出する、というのがMVによる電気発生の仕組みです。そのため、MVの中に乳酸を分解する酵素を入れておけば、膜小胞と電極を入れたデバイスを腕に装着することで、汗中乳酸と電極内の酵素が反応して電気が発生します。
デバイスが自前で発電するため外部電源は不要になり、他にも定量性や寿命・耐久性に優れるなどの利点があり、今後プロダクト化する際には既存の熱中症センサーとは異なる優位性をアピールできるのではないかと考えています。

本研究は、高効率に乳酸を検出できる膜小胞の形成法などの基礎研究を私が担当し、電池・センサー回路の設計などの工学的な領域をバイオセンサーに詳しい辻村清也准教授が担当しています。
これまで幾つものバイオ材料のセンサー開発に関わってきた辻村先生との分野融合を非常に心強く感じています。

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MVを利用した発電とウェアラブルセンサーのイメージ図

スポーツや非常電源、応用の可能性は無限大

現在の目標は、低コスト・高耐久・軽量・高出力の熱中症センサーを開発すること。最終的には、猛暑とうまく付き合う社会システム・Internet of Medical Things (loMT)の創成に貢献できることを願っています。
本プロジェクトの出発点である基礎研究については、2023年5月に「電気化学活性構造体、電気化学エネルギー変換方法、及び電気化学活性を有する膜小胞の製造方法」の特許を取得しました。
今後この知見をどう発展させていくのか。ここからどんなプロダクトが生まれるのか。そこはぜひとも、これをご覧になって興味を持ってくださる企業や民間の方々と一緒に探っていけたらと考えています。
熱中症に限らず、スポーツやランニングの際のペースメーカー、災害時の非常電源や緊急連絡システムへの応用や、もしかするとヒトに限らず動植物にも応用が効くのでは?というような思いもかけないお問い合わせも、そこから飛躍するアイデアの種になるのではないかと期待しています。

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