Driving Sustainable Development
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MESSAGEメッセージ

永田 恭介

筑波大学長

大学として、大学人としてSDGs、
その先を見据えて

大学の心得は、研究と教育を進め、そして社会貢献への姿勢の堅持である。
持続可能な開発目標を越えるBeyond the SDGs、答えなき答えに挑む。

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研究型大学としての意識

最も大切なことは、筑波大学の取り組みにSDGsを当てはめるのではなく、SDGsにどれだけ大学が貢献できるか、ということです。

 

本学は研究型大学であり、基礎・応用・開発などの大きな研究枠組みのもとで、解決しなければならない諸課題に日々取り組んでいます。その上で、生まれた知を継承する人を育てています。知の生産と人材育成の根本は研究そのものにあります。各研究者は自分の研究のどこがSDGsに合致しているか、その点をまず意識することが重要です。

 

全ての研究がSDGsに貢献できる側面をもっています。一例を挙げると、電池や触媒の研究があります。一見SDGsとは関係がないように思われますが、そうではありません。エコエネルギーで重要なのは「蓄電」です。せっかく大量に電気を生産しても、それを溜めておく技術がなければ放電する以外ありません。この溜める技術をどう開発するか、電池や触媒の研究はSDGsの目標達成に深く関わっています。

 

もう一つ、人間とロボットが「共生」する社会をイメージしてみましょう。ロボットは介護支援や移動手段など多分野で活用され、大きな力を発揮するでしょうから、ロボットの研究は、SDGsが掲げる「だれひとり取り残さない」というスローガンにも合致し、大きく貢献する側面をもっています。また、人とロボットの関わりが密になれば、 人とロボットを繋ぐ法律が必要になってきます。例えば、老人が家族を無くし、ロボットの犬と余生を過ごしていたとします。そんな老人のロボット犬を誰かが壊したとします。現在の法律では「壊された」 ですが、この老人にとっては 「殺された」に近いはずです。この感情を法律や規則にどう具現化するかも解決すべき課題のひとつです。

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社会貢献につながる研究者の心得

近視眼的に自らの研究だけを見ていると、SDGsとのつながりにまで考えが及ばないこともありますが、より広い視野から振り返ると、意外な所で関わりがあることを発見できます。地球を健全な形で持続させる、社会をより暮らしやすくし、誰もが幸せを追求できるような社会の仕組みをつくる、これら満たして初めて、Sustainable Development になるわけです。

 

産業界とアカデミアが協力する「産学連携」により、研究成果を製品や社会システム等の形にして社会に実装していく際、利便性や効率性を追求するあまり、SDGsに背く内容になる可能性があります。これは、あってはならないことです。研究者一人一人が自身の研究と社会との関わりを絶えず意識することが、本当の意味での社会貢献につながるのです。

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持続可能な開発目標の観点からの教育実践

これからの社会を担う学生たちには、社会の諸事象を理解し、自ら行動できる人になってほしいと願っています。SDGsは世界共通の目標ですから、分かりやすい教育の指針でもあります。

 

本学が推奨し、実践しているのが「武者修行型学修」です。これは、学生自らが課題を設定し、必要な情報収集を行い、成果を発表するという学修形態です。

 

芸術系の学生たちが実際に行った「武者修行型学修」の一つに、「竃プロジェクト」があります。これは、自分たちが被災地などで「竈」を作り上げ、被災者と共に食事をすることで復興に貢献しようとするプロジェクトです。人が火に集まり、食べ物を作るという営みを通し、心のケアと人々のモチベーション向上に働きかけ、復興の活力になりました。このようにプロジェクトを企画し、実行する一連の過程は多くの困難が伴いますが、自身の中にSDGsの視点や考え方が育まれます。

 

また、体育とは人文、工学、自然科学、アスリートを含む総合科学です。本学ではオリンピックを対象にアカデミックな研究が行われています。4年に一度開かれるオリンピックはスポーツ競技の集大成ですが、その最終的目標は地球の平和にあります。そして、オリンピックがパラリンピックを始めたことは、SDGsが掲げる「誰も取り残さない」の精神ですから、平和を希求するオリンピックはSDGsそのものと考えます。

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目標の達成とその先にある答え

2030年を迎え、SDGsの目標が達成できたように思える時代が来たとします。その時に、現状でこと足れりとせず、次のステップにつなげられるよう働きかけていく必要があります。

 

現在の形が到達点であると認めてしまった時点で、人と社会の歩みは止まってしまいます。過去と現在の認識を踏まえたうえで、SDGsの先はどうなるのかを探ることができなければ大学としては存在価値がありません。

 

これから先の未来は、今までの社会構造とは大きく異なるものに変わってしまうはずです。AIの浸透により50%以上の職業が無くなると予想されるように、今後の社会の動態を充分注視する必要があります。真に人がなすべきことを見出し、実行できることが求められています。未知に立ち向かい、越えるために必要なものは何かを発見できるような学問を新たに構築しなければなりません。SDGsの次にくるものは何か、すなわち「Beyond the SDGs」を探求する文理横断的な大学の活動が必要です。

 

SDGsを越えた先に何があるのか? 今、これには答えはありません。今から学生を含めた大学人が一緒になって考えていくことです。答えを教えるのではなく「共にその答えを見つけるための試行錯誤を継続する」。それが、大学における学問の在り方なのです。

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