
プロジェクト代表の福田直也教授
「カーボンニュートラル」と聞くと、環境やエネルギーの専門家だけが取り組むテーマと思われるかもしれません。
しかし、気候変動や資源循環、持続可能な社会の実現といった複雑な課題は、一つの専門分野だけで解決できるものではありません。
筑波大学 DESIGN THE FUTURE機構の「地球規模的課題の解決のための全学的広域分野横断型研究推進プラットフォームの構築」(以下、CNプラットフォーム)は、そんな課題に挑戦するために開始しました。
異なる専門分野が出会うことで、新しい研究が生まれる。
生命科学、農学、情報科学、工学など、多様な専門分野の研究者が互いの知見を持ち寄り、新たな研究テーマを生み出す。
そして、その積み重ねがカーボンニュートラルという社会課題の解決へつながっていく。
今回は、CNプラットフォーム代表の福田教授に、プロジェクト立ち上げの背景と、その先に期待する未来について伺いました。
一つの研究室では解決できない課題に挑む
福田教授の専門は、野菜の栽培技術や植物工場などの施設園芸です。
一見すると、カーボンニュートラルとは少し距離があるようにも思えます。しかし先生は、自身の専門分野だけでなく、異なる分野との連携こそが今後の研究には欠かせないと話します。
「現在の地球規模の課題は、一つの研究分野だけでは解決できません。」
また、筑波大学には、多様な専門分野の研究者が集まっています。
その強みを生かし、カーボンニュートラルを共通のテーマとして研究者同士をつなぐ新しい組織をつくってはどうか。
こうして開始されたのが、CNプラットフォームの研究プロジェクトです。
「研究する場」ではなく、「研究が生まれる場」を目指して
CNプラットフォームの特徴は、一つの研究テーマに取り組む組織ではないことです。
目指しているのは、それぞれ異なる専門分野を持つ研究者が出会い、新しい共同研究を生み出すことです。
現在は、カーボンニュートラルに貢献する学際的な研究チームの形成を進めています。
例えば、
- 森林と農業を組み合わせたアグロフォレストリー
- 水産業・農業・資源循環を組み合わせた循環型システム
- バイオマス資源の有効利用
- 行動変容の促進を目指した社会実証
- AIを活用した新しい技術開発
など、多彩な研究や実証プロジェクトが進められようとしています。
これらは、どれも一つの研究室だけでは生まれにくいテーマです。異なる専門性を持つ研究チームが協力することで、新しい発想が生まれ、これまでにはなかった研究へと発展しています。
「つながる」ことから始める
プロジェクト開始から約3年間で、最も大きな成果は何だったのでしょうか。
福田先生は、「研究コアの立ち上げと、研究者同士がつながる基盤をつくる体制作りをしたこと」だと振り返ります。
共同研究は、一朝一夕に成果が生まれるものではありません。
だからこそ、研究者が互いの専門性を知り、相談し、新しいアイデアを生み出せる環境を整えることが重要でした。
現在では、それぞれのチームが独自の研究を進めながら、CNプラットフォームという共通の枠組みの中で新たな連携が始まっています。
研究体制のイメージ
目指すのは、大学に残る「仕組み」
CNプラットフォームは現在、プロジェクトの後半を迎えています。
今後は、学際的な研究ユニットをさらに具体化し、AI分野との連携なども進めながら、社会実装や論文発表など実のある成果へとつなげていく予定です。
一方で、このプラットフォームを発展させる中で目指すものは、研究成果そのものだけではありません。
「組織の規模を大きくすることよりも、この仕組みが続いていくことが大切です。」
プロジェクト終了後も、研究者が「誰かと新しい研究を始めたい」と思ったときに、自然と人が集まり、新しい連携が生まれる。
CNプラットフォームを、そんな”つながる場”として大学に根付かせられればと考えています。

CNプラットフォームの体制イメージ
総合大学だからこそできる挑戦
筑波大学には、多様な専門分野の研究者が集まっています。
その強みを最大限に生かせることが、CNプラットフォームの大きな特徴です。
専門分野の垣根を越えて研究者同士がつながることで、新しい研究が生まれ、社会課題の解決につながっていく。
その挑戦は、カーボンニュートラルにとどまらず、持続可能な社会を実現する新しい研究のあり方を示すものでもあります。
おわりに
CNプラットフォームは、完成された研究を集めたプロジェクトではありません。
異なる専門分野の研究者が出会い、新しい研究を生み出し、その成果を社会へ届けていくための「場」です。
ここからどのような研究が生まれ、どのような未来につながっていくのか。
次回からは、それぞれの研究チームが挑戦しているプロジェクトをご紹介します。
森林と農業、水産業と資源循環、AI技術の応用など、他にも多様な専門分野とテーマがどのようにつながり、カーボンニュートラルな社会につながる新たな研究を生み出しているのか、ぜひご期待ください。
研究者情報
福田 直也 教授 https://trios.tsukuba.ac.jp/researcher/0000001271

