植物にタンパク質を大量に作らせる方法
タンパク質を生産するために従来広く使われてきたのは、大腸菌や動物由来の細胞です。これに対して、私たちが開発した植物による生産系「つくばシステム」には、次のような数々の利点があります。
1.複雑な構造やサイズの大きいタンパク質も作れる、2.遺伝子情報の導入が容易である、3.従来の方法の倍速で大量生産ができる、4.培地がいらない、5.生成物の精製が簡単である、6.よく使われるベンサミアナタバコ以外にも、トマトやレタスなど多くの植物で生産できる、7.安価で管理しやすく環境にやさしいなどです。
植物にタンパク質を作らせる試みはこれまでも行われてきましたが、発現量が低く、実用的な収量を得るには至りませんでした。私たちは、植物に感染するジェミニウイルスの複製システムに、転写終結領域であるターミネーターを2つ挿入したベクターを作成し、これを植物に注入するアグロインフィルトレーション法によって、世界最高レベルの高い発現量を短期間で得る技術を開発しました。ベンサミアナタバコの葉の新鮮重量1gあたりおよそ4mgのタンパク質を3日という短期間で得ることができます。
この方法でシラカバ花粉症のアレルゲンを生産して舌下免疫療法に供するなど、医療分野への応用の可能性も広がりつつあります。
図1 左:ベンサミアナタバコの葉にベクターをシリンジで注入する(アグロインフィルトレーション法)
右:「つくばシステム」では、ベンサミアナタバコの葉の新鮮重量1gあたりおよそ4mgのタンパク質が3日で発現する。これは従来のベクターを利用した場合の半分の期間で達成でき、世界最高レベルの収量を誇る。GFPを組み込んで蛍光発色させたことで発現量の違いがわかる。