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News2020.10.19

TGSW2020セッション開催報告「憲法はいかにCOVID-19に対応できるか?」

9月29日、Tsukuba Global Science Week 2020における自由セッション「憲法はいかにCOVID-19に対応できるか?」(セッションオーガナイザー:秋山肇助教(人文社会系))がオンラインで開催されました。

従来、憲法規範においては個人の自由が優先されてきたものの、COVID-19の感染拡大を受け、公衆衛生ならびに公共の福祉を優先し、個人の自由を制限する傾向にあります。そこで本セッションは、フランス、スイス、アメリカ合衆国、日本の専門家をまじえ、未曾有の状況下で、憲法のいずれの規範を優先すべきか再考し、学際的な見地から新たな憲法の立法の可能性及び解釈を探ることを目的として開催されました。

第一部では、フランス・リヨン第三大学(Jean Moulin Lyon 3 University)のマリー=ロール・バジリエン=ゲンシュ教授(Professor Marie-Laure Basilien-Gainche)が「COVID-19に直面するフランス憲法:いかに例外が常態化させられるか」と題し、例外的措置であるはずの緊急事態化での人権の制限が常態化する危険性について述べられました。
続いて、スイス・ローザンヌ大学(University of Lausanne)のヴェロニク・ボワイエ(Associate Professor Véronique Boillet)准教授が、「COVID-19とスイス憲法」と題し、スイスにおける連邦感染症法の問題点について述べられました。
欧州大学院・欧州法学術院でプロジェクトマネージャー(Project Manager, Academy of European Law, European University Institute)を務めるジェフリー・ミラー博士(Dr Jeffrey Miller)(アメリカ合衆国・ギャローデット大学助教(Assistant Professor, Gallaudet University))が、「COVID-19とアメリカ合衆国憲法」と題し、アメリカ国内における感染症法および憲法問題について発表されました。
最後に、国際基督教大学のジョージオ・シャーニー(Professor Giorgio Shani)教授より、政治学の見地から討論が行われ、緊急事態が平常化することへの危機感について再考しました。

第二部では、まず本学の秋山肇助教が「COVID-19と日本国憲法」と題し、日本国内における罰則を伴う措置の可否について述べられました。続いて、イギリス・ミドルセックス大学上級講師(Senior Lecturer, Middlesex University)のジョエル・グローガン博士(Dr Joelle Grogan)が、比較法の観点から、緊急事態下における人権の在り方や法改正の必要性について討論されました。最後に、本学医学医療系の我妻ゆき子教授による、公衆衛生の見地からの討論の後、登壇者を交えてのパネル・ディスカッションが行われ、未曽有のパンデミックが発生した際の法制度の適用および権利保障について議論が行われました。

コロナ禍における憲法のあり方について、憲法学だけではなく政治学や公衆衛生といった多角的な見地から考える貴重な機会となりました。(文:社会・国際学群 社会学類3年 大山千聖)


1段目左から、我妻教授、秋山助教、グローガン博士。2段目左から、ボワイエ准教授、ミラー博士、バジリエン=ゲンシュ教授。3段目、シャーニー教授。

なお本セッションの模様は、本学YouTube公式チャンネルより視聴ができます。


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